BSE北米調査団

調査報告
○ 期間
   2005年7月18日(月)〜2005年7月23日(土)
○ 調査団の目的
  アメリカ・カナダにおけるBSE対策の現状調査及び、関係政府機関、消費者団体・食肉業者からの意見聴取との意見交換。
○ 調査団の構成
団 長 鮫島 宗明 『次の内閣』農林水産大臣
団 員 松下 新平 参議院議員
事務局 西山  聡 政策調査会
○ 日程 ※写真をクリックすると大きく表示されます。
日程  
7月18日
<カナダ・オタワ>
18:00〜
駐加大使意見交換 沼田大使
調 査
内 容
 カナダ大使館・沼田大使より、カナダのBSE対策の現状、カナダからアメリカへの生体牛輸出再開問題等について、現地における状況説明があった。
 カナダにおいては、消費者の間ではBSE問題はさほど重大問題として認識されていないこと。カナダと米国間において、米国農務省が18日(本日)カナダ産の生体牛の輸出を再開したこと。等について概略の報告があった。
7月19日
<カナダ・オタワ>
7:00〜
朝食懇談会
調 査
内 容
 カナダから米国への生体牛輸出再開が昨日より行われたことについて、カナダ側から説明があった。米国農務省のコメントによると「この問題については法律的に判断するところであり、ただ、やたらに批判することはしない」とのことであったが、特に「決定を尊重する」という言葉が10回も出てきた。また、この問題では米国の別の裁判所が27日にカナダ産生体牛等の輸入禁止を再び決める可能性もあるが、上告審の判決理由が発表されない以上再び輸入禁止の事態になることはないと思われるとの発言があった。
 また、日本がカナダ産牛肉を輸入再開するためにも、日本のように全頭検査を実施してはどうかとの問いに対しては、カナダとしては、日本がとってきた措置は理解できる。しかし、日本への輸出は2万tぐらいであり、日本だけのために全頭検査を実施することは困難であるかもしれない。との返答であった。
8:30〜
農業省次官との意見交換
<カナダ農業省>
エドワーズ農業省次官、ジオカス東半球貿易政策課長
マクドナルド同課アナリスト
調 査
内 容
 まず、調査団側から、畜産の世界を襲っている異常プリオンというテロリストに対して、カナダとしてはどのような対策をとっているか。日本のBSE対策を踏まえた貿易システムの確立のあり方をどのように考えているのか。これらの問題を早く解決して日本の消費者が望む、20〜24ヶ月齢牛の貿易の再開について結論を出したいとの2点の質問を行った。
 これに対し、カナダ側から、カナダにおけるBSE問題はほぼ終焉したといえる。その結果として米国に対する生体牛輸出が再開されたとの回答があった。
また、異常プリオン対策として@カナダのBSEは英国からの輸入牛によってもたらされたが、1997年の肉骨粉の反芻動物への供与禁止により、発生が低下ないしは撲滅が予想される。A反芻動物由来の飼料を非反芻動物への供与について、特定危険部位を全て除去するか高い割合の部分のみ除去するか業界等との協議を終了し1ヶ月内に結論を出す予定だが、いずれにしろ、全ての動物から異常プリオンを除去することが望ましい、との主張が述べられた。
 また、貿易再開について、カナダ側から(日本で狂牛病が多く発生したことや、消費者の立場も理解しているが)日本が20ヶ月齢の牛について全頭検査を行わないとの決定を下したのは喜ばしいことであり、できるだけ早く輸入再開して欲しい、できればOIEのガイドラインを基に、30ヶ月齢の牛についても特定危険部位を除けば自由に貿易を行いたいとの要望があった。
 なお、調査団側から、最初の段階として日本向け輸出分についてのみ全頭検査を実施してはどうかとの問いに対しては、カナダの牛肉は国内と米国が最大の市場であり、日本向けのみ特別な検査を行うと、なぜ日本向けのみとの疑問が生じる。OIEのプロセスやカナダ国内の消費者の理解が得られるようであれば検討したい。との回答であった。
10:00〜
食品検査庁との意見交換
<食品検査庁>
ビーバー局長、デュマスルイター監査・評価課長
ヒューイット政策課長、マレー上席アドバイザー
マキネス市場アクセス分析官
調 査
内 容
 カナダ食品検査庁はCFIA法によって設置された機関であり、主たる業務としては、プランニングの監督、議会への報告、定期的なプログラムのレビューなどであり、BSE問題については、飼料工場・レンダリング工場に対する検査や、検査官の訓練なども行っている。同機関とは極めて科学的な見地から議論を行った。
 まず、調査団側から、カナダのフィードバン(牛への反すう動物由来の飼料給与を禁止)後に関連して、肉骨粉・代用乳に関する質問を行った。これに対し、牛由来の肉骨粉が牛に使われている可能性はあるが極めて低いこと、日本のように代用乳に肉骨粉を混ぜることはほぼありえない(もっと栄養価の高い物を混入するため)こと等の回答があった。
 また、カナダ側から、BSE対策プログラムの4つの主要点の説明があった。
@サーベイランス用のテスト強化
2004年には8千頭、2005年には3万頭のテストを実施(なお、カナダにおける牛は1600万頭・内、成牛600万頭)
ASRMの除去
 CFIAで行った食肉工場等700ヵ所の検査等によると、SRM除去の遵守率は99.7%に達する
B牛のトレーサビリティーの強化
 検査官は追跡調査や、品評会等でも調査を実施し、その結果遵守率は97.7%
C輸出証明書の強化
 米国BSE規制に合致しているか、15000の証明書が出された。
と以上の4点の説明があり、これら対策によりカナダでは、消費者の混乱もなく、BSEが2例発生した以降、牛肉の消費は64%から73%に増えたと述べた。
 この説明に対し、調査団側から、日本で発生したBSE牛について9頭は見かけ健康牛から発生している。また、全頭検査の結果21ヶ月・23ヶ月齢の発生例が生じたと述べた。(この発生例については、カナダ側から科学的に確認されたかどうか未定であるとの主張があった)
 最後に、調査団の、カナダにおける月齢判別方法に対する質問に対し、カナダでは1997年より、牛に生年月日を記したタグをつけることが始まり、2001年からは義務化された(タグの費用は約7ドル)、現在はダイオードや電波式タグも使われている、肉質による月齢判別方法(米国では使われている)については月齢が正確でなく(実際より若く換算される)使用していない。との回答であった。
7月20日
<アメリカ・ワシントン>
10:15〜
国立衛生院(NIH)との意見交換
<国立衛生院>   
メージャー博士、マイケル・ナン博士、
アブナー・ノートキンス博士
調 査
内 容
 バイオメディカルとしては最大級(予算280億ドル)を誇る科学的研究機関である。神経系・プリオン等の研究についても最先端であり、農務省や国防省、環境保護庁、疾病管理センター、食品医薬庁などとも密接に連携している。
今回、科学的知見から異常プリオン問題について議論を行った。
 まず、調査団側から、BSE問題について米国政府の政治的判断を求める声は聞こえてくるが、BSE専門家の声・評価は聞こえてこない。日本で見つかった、21ヶ月・23ヶ月齢の発生事例や、何ヶ月齢なら検査を省略してもよいと科学的に判断できるかとの質問を行った。
 NIHからは政策的な話は行う立場にないが、関連する研究の進行状況については話すことができるとの回答があり、これに対し、調査団側から、政策決定と科学の問題は異なるにしろ、BSE対策として、基礎研究の成果が政策決定に影響を与えることがある。1つはSRMの特定であり、もう1つがモニタリングシステム。同じ異常プリオンでも外見上現れるものとそうでないものがあるが、それを検出するシステムについて回答を求めた。これについて、NIHとしてはまだ研究・議論中であるが、SRMの性質や、何に利用されているかなどについては非常に重要な問題と考えていると説明があった。
 最後に、調査団から、日本では、キャリアグループが発見されたが発生はしていない事例や、21ヶ月と23ヶ月齢で発生したなどの例が見つかっていることについての意見を求めたが、これに対し、8月に行われる、プリオン科学委員会において報告したいとの話があった。
12:00〜
駐米大使との意見交換
調 査
内 容
 アメリカ大使館・大使より、米国のBSE対策の現状、状況説明があった。
 アメリカにおいては、BSE問題は、一部消費者団体では問題視しているが、消費者の間ではさほど重大問題として認識されていないこと。米国が日本向けの輸出再開を、政治的にも早急に望んでいることなどの説明があった。
14:10〜
<米国農務省>  
バトラー副次官
カート・ミラー海外農業局ゼネラル・マネージャー
バリー・カーペンター農業マーケティング次長
アンドレア・モルガンフ動植物検疫局次長代理
リック・ハリス食品安全検査局輸出入政策課主席
ハワード・ウェッツェル海外農業局畜産課長
16:45〜
<コンシュマーズ・ユニオン>  
サリー・グリーンパーク氏
7月21日
<アメリカ>
オハマ、ダゴタシティ
16:00〜
タイソンフーズとの意見交換
<タイソンフーズ> 
トーマスゼネラルマネージャー
チャッド・マーティン氏 グラハン氏、他
調 査
内 容
 タイソンフーズは米国最大の食肉業者であり、今回視察したダゴタシティのと畜場は日本向けの主力工場である。
 まず、調査団側から特定危険部位の除去について質問と視察を行ったが、日本で実施されているピッシングは行っていない(米国では禁止されている)。特定危険部位については日本以上に完全除去をしていることが判明した。
 また、肉質の判定については、書類や固体識別で月齢を判別し、それがないものは肉質判別のA40を使用するとしたが、実質的にはA40の月齢の牛はほぼ0%であり、日本が輸入解禁をしても、今後輸出可能な牛肉量は極めて限定されることがわかった。
〜調査を終えて〜
 現在、米国やカナダで行われているサーベイランスは、ハイリスク牛のみを対象としているため、低リスク牛を対象としている日本の例と比較すると、発病前の異常プリオンを保有している可能性が否定できない。
このことは、NIHの専門化も重要視して、今回の会談で、NIHやUSDAなどで実施する次回のプリオン専門小委員会でも報告し、検討するとのことであった。
また、月齢判定については、カナダはほぼ全頭の月齢管理ができていると言える。しかし、米国においては統一的な月齢管理はできていない。米国最大の食肉業者であるタイソン社においすら、ID管理はほぼ0%であり、米国が主張するA40の肉質判定も25%程度しか行われていない。
よって、日本向け輸出量の量的確保は現時点では困難であり、米国が輸出再開のためには、少なくとも日本・カナダ・オーストラリアが実施しているような月齢判定システムを導入することが不可欠である。
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