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参議院本会議−
−農業経営基盤強化促進法一部改正案 代表質問−
平成17年4月27日(水)
■松下新平■
私は、宮崎県選出の松下新平でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
ただいま議題となりました農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法案につきまして、民主党・新緑風会を代表して関係大臣に質問をいたします。
質問に先立ちまして、一昨日、兵庫県尼崎市において発生いたしましたJR福知山線の列車脱線事故は、JR発足史上最悪の大惨事となりました。ただいま御報告をいただいたとおりです。不幸にも亡くなられた方々の御冥福をお祈りするとともに、負傷された方々にお見舞い申し上げます。また、政府においては、事故の原因究明と再発防止に万全を期すよう要請いたします。
それでは、本題の法律案に対する質問に入ります前に、米国産牛肉の輸入再開問題に関して質問いたします。
この問題は、日本にとっては、将来の日本の子供たちの命、健康にかかわる重要な問題であります。この問題に対して政府の大きな二つの過ちを指摘します。
まず一つは、外交の失敗です。日本側から牛肉の輸入再開の期日が示されないことにしびれを切らして、米国は再三にわたり我が国に圧力を掛けてきました。特に、米国の上下両院で対日経済制裁が検討されたことは誠にゆゆしき事態であります。この原因が、どうも昨年秋に開催された第四回日米BSE協議において交渉に当たっていた日本政府の代表が思わせぶりの態度を取ったことが発端のようです。
結果として輸入再開になろうとも、当然、政府一体として毅然とした態度で臨むべきでした。そうすることが、日本は言うべきときにははっきり物を言う、外圧に屈せず自国の国民の命を最大に尊重したと、世界各国からも高い評価を受けたことでしょう。
もう一つは、中立公正の立場を取ることを殊更強調し、食品安全委員会の科学的知見に基づく判断をといいながら、半ば公然と政治介入を続けていることであります。非常識発言に始まり、審議時間の速度に言及するなどの複数の大臣の言動が、食品安全委員会の皆さんに有形無形の影響があったことは容易に想像ができます。
食品安全委員会は、本日、パブリックコメントの募集を締め切り、国内の基準について正式に答申をした後、いよいよ米国産の牛肉輸入再開の条件についての諮問がなされますが、問題はこの諮問の内容であります。
所管する農林水産大臣は、衆議院の本会議や農林水産委員会の発言で、米国産牛肉の安全性をこれから諮問する食品安全委員会に対して、米国の飼料規制の有効性について諮問する必要はないと明言されました。果たしてこれでいいのでしょうか。
現在のBSEも含めて、これから発症されるであろう未来のウイルスについては、まだまだ未知の分野が多いからこそ、その入口、原因とされる牛の飼料規制が今後の発生防止のためには極めて重要なのであります。
しかも、アメリカの飼料規制には、日本の会計検査院に当たるGAOが検査体制が不十分とする報告をまとめており、一部の飼料工場ではBSEの感染ルートの一つである肉骨粉が一年余りにわたって飼料に混入していたということでありました。
島村農林水産大臣の発言は、このような米国における牛の飼料規制の状況に目をつぶるもので、国民の食の安全の責任者としての自覚を著しく欠いています。また、輸入牛肉に対する国民の不安感をいたずらにあおるおそれがあるともいえます。
そこで、食品安全委員会へ諮問するもう一方の当事者であり、国民の健康をつかさどる尾辻厚生労働大臣にお伺いします。
島村農林水産大臣の一連の御発言についてどのようにお考えなのか、やはり同様にBSE発生の原因とされる飼料規制について諮問しないという態度をお取りになるつもりなのでしょうか。国民の命、健康を受け持つ最高責任者としての答弁を求めます。
また、食品安全基本法第二十三条第二項には、食品安全委員会は自ら食品健康評価を行うことができる規定があります。これは、諮問がなくとも必要ならば職権で調査できるということです。
所管する棚橋大臣に同じ質問をいたします。この問題は、十年後あるいは二十年後に潜伏期間を経て発症する可能性のある極めて深刻な問題なのです。ずさんな諮問内容により、後でしまったというようなことにならないように、責任世代の代表者として明確な御答弁をお願いいたします。
それでは、本題の法律案についてお尋ねいたします。
皆さん御認識のとおり、今、農山村は疲弊しております。長年の不景気で農産物価格は低迷してしまっている中で発生した昨年の度重なる自然災害は相当な痛手になり、今もなお再生できず途方に暮れている農家も少なくありません。ここ数年の自殺者の推移でも、農業従事者の割合が高くなっております。こうした現状を踏まえますと、今までの農業政策が失敗であったと、そのことにほかなりません。
過去の反省の上に立ち、農業の原点に立ち返ることで見えてくるのが、本来の役割の原点から懸け離れた農業の利権と言われる分野の温存であり、うまみのある政官業癒着構造へのメスを入れさせない、ごまかし、まやかしの法案の姿です。
そもそも農業は、天候や病虫害、国際化による輸入農産物との競合など極めてリスクの大きい側面を有する一方、品種改良や健康食品への活用などにより無限の価値を見いだすことが可能な分野でもあります。
そうした農業の特性を考えると、私は、これからの農業は自立を基本として、大規模経営、集落営農、フランチャイズシステムによる中小企業的農業など多様な農業経営が地域の実情に応じて円滑に展開していけるよう、生産、加工、流通、価格の面で不必要な規制は撤廃する一方、安全面では規制を強化するなど、関連する制度の改革や地方自治体への権限移譲が行われていくべきだと考えます。
こうして、国や地方行政は、農業の自立支援に必要な環境整備やセーフティーネットの充実などの面で農業を支えていくことが必要であります。特に国は、農業生産力の維持や多面的機能維持のための農地の確保、条件不利地対策、食料安全保障や食品安全、消費者保護などに重点化していくべきだと考えます。
そこで、まず、こうした農業、農政の在り方について島村農林水産大臣の御所見をお伺いいたします。
戦後の食料難の時代から高度経済成長を経た今日、確かに国民の食料事情、食生活は改善しました。しかし、それは世界一の農産物輸入によって支えられており、昭和四十年にはカロリーベースで七三%だった食料自給率は四〇%まで低下しております。日本の農業は一体どうなってしまったのでしょうか。
輸入農産物の激増に伴い国産農産物の価格が低迷し、農家の農業収入は伸び悩むなど、農家を取り巻く環境の悪化を受けて、農家の若い人たちは農業に未来を見いだせずに農村を離れ、農村地帯では高齢化、後継者不足が深刻な事態となっております。農業は危機的な状態なのであります。
一方、国際的には地球環境問題、人口増加問題等を背景に食料需給の逼迫が顕在化していくものと見込まれており、国民の安定的な食料供給のために、輸入に頼ることなく、可能な限り国内農業生産力の維持拡大を図ることが急務です。
そこで政府は、小規模零細が中心の農業経営から、経営感覚に優れた効率的、安定的な経営体中心へと農業構造改革を進めていくことを農政の基本課題として位置付けてきました。本改正案は、この基本課題への取組を更に加速化するために、担い手を特定、明確化し、農地の利用集績を一層促進していくための諸措置を講じ、担い手育成のための制度拡充や関係する農地制度を改正しようとするものであります。
そこで、まず、本改正案による農地制度改正と、平成十二年に策定された旧計画に代わるものとして今年三月閣議決定されました食料・農業・農村基本計画との関連についてお伺いいたします。
言うまでもなく、農地は農業の基本的な資源であり、その確保と農業上の有効な活用は極めて重要であります。本計画によれば、農地は平成十六年現在の四百七十万ヘクタールから、平成二十七年には二十万ヘクタール減少することが見込まれるとされています。しかし、本当にこの程度の減少で済むのでしょうか。
実は、平成十二年策定の旧計画においても今回と同じく農地の有効利用、担い手への農地集積の必要性を説きながら、当初の予想を二倍も上回るスピードで減少したのです。このような結果をどう考えますか。その理由も含め、島村農林水産大臣に御見解をお伺いします。
さらに、こうした構造改革や耕作放棄地対策を講じても、結局は旧計画の二の舞となってしまうのではないかと危惧されていますが、いかがでしょうか。
次に、自給率との関係であります。
新計画では、自給率を現在の四〇%から、十年後の平成二十七年度までに四五%、引き上げるとしております。しかし、農地面積から見ると、十年で自給率を五%も引き上げることが可能なのか、疑問を抱かざるを得ません。単純計算すると、実に一八%も生産性を向上させる必要があります。さらに、このまま減少傾向が続くと仮定すると、実にこの十年で生産性を二三、四%も向上させる必要があることになります。
この点でも、現行の政策の延長では自給率四五%達成は無理、幻想にすぎないのではないでしょうか。本当に農地の確保は達成できるのか、また自給率もこの農地面積で達成可能であるのか、島村農林水産大臣にお伺いします。
最後に、本改正案の一つの柱は、集落を基礎とした営農組織の育成・法人化を図るとともに、その営農組織を含む担い手に対し、農地を利用集積することが期待できるというものであります。
ここで特に重要と思われるのが、その営農組織に小規模農家や兼業農家を参加させる仕組みをつくったことであります。地域農業の担い手は、主業農家や農業生産法人などといった認定農業者だけでなく、一定の役割を果たしているこうした農業者を集落営農に参加させるこれらの措置は一応評価できるものであります。
しかし、問題は、この集落営農が特定農業団体、特定農業法人という法的な担い手として認定され、金融、税制その他ソフト面での経営支援を受けるためには、一元的に経理を行い法人化する計画を有するなどの条件が厳しく制定されております。さらに、平成十九年度からの導入に向けて具体的に仕組みや条件などが検討されている担い手経営安定対策、担い手に直接支払、財政支援でありますが、構造改革の見地から一定の経営規模を満たす集落営農でなければ対象にならないとも言われております。
これでは、仕組みはつくったが、実際は条件が厳し過ぎてほとんどの集落営農が担い手に認定されない、担い手経営安定対策の対象にもならないことになりかねません。集落営農の営農形態や規模は地域の実情によって様々であり、こうした一律で厳しい条件を付すべきではないと思いますが、大臣の見解を伺います。
こうした小規模農家や兼業農家はもう農業をやめるしかないということなのでしょうか、併せて島村農林水産大臣にお伺いします。
結びに、このたびの中国や韓国における反日デモの暴徒は決して許されるべきものではありませんが、長年の事なかれ主義の日本外交のツケが回ってきていると思われても仕方がありません。同様なことが、取り上げましたBSE問題などの農業交渉にも言えるのではないでしょうか。
今年は、ポーツマス条約に調印してから百年目に当たります。この調印を果たし、誠の心の外交、魂の外交として名高い小村寿太郎侯は、我が宮崎県出身であります。今こそ、私利私欲のない、正しいことは正しいとはっきり物を言い行動する小村侯に思いを巡らし、国のあるべきかたちを大いに語ることが大切であります。
申し上げましたように、農業の発展は、美しい環境、国土をもたらし、地域を魅力的に再生する源であり、言わば日本再生のキーワードです。未来産業として農をもう一度原点に返って考えてみることを提起して、私の質問を終わります。
■島村宜伸 農林水産大臣■
松下議員の御質問にお答えいたします。
まず、今後の農業、農政の在り方についてのお尋ねでありますが、先般、今後の農政の基本方向を定める新たな食料・農業・農村基本計画を閣議決定したところであります。
この基本計画におきましては、食料自給率の向上に取り組むほか、食の安全と消費者の信頼の確保、担い手の経営に着目した経営安定対策への転換や、担い手への農地の利用集積の促進、高品質な農産物の輸出などによる攻めの農政の展開などの政策の方向付けを行っています。
今後、この基本計画に基づき、農業者が創意工夫を発揮し、特色ある経営を展開できるよう、積極的に後押ししてまいる考えであります。
次に、農地面積の減少についてのお尋ねでありますが、我が国の農地面積の減少の大きな要因は耕作放棄地の増加であります。このため、新たな基本計画においては、農地制度の見直しを行い、体系的な耕作放棄地対策を整備するとともに、担い手の育成や農地の利用集積に資する生産基盤整備の積極的推進、中山間地域等直接支払における耕作放棄地の復旧に対する加算措置の導入などにより、農地面積の確保に努めてまいる考えであります。
次に、農地面積の見込みなどについてのお尋ねでありますが、新たな基本計画においては、これまでの趨勢を踏まえ、また、耕作放棄の抑制などの施策効果を織り込んで、平成二十七年の農地面積について四百五十万ヘクタールと見込んでおります。また、先ほど申し上げた耕作放棄地対策を始め、農地の確保と有効利用を促進するための措置を講じることとしております。さらに、食料自給率四五%の達成の前提となる消費、生産両面における課題の解決に向け、生産者、消費者、食品産業の事業者などの関係者と一体となった取組を推進してまいります。
次に、集落営農の要件についてのお尋ねでありますが、担い手として位置付けられる集落営農となるためには、持続的かつ安定的な経営体としての実体を有していること、集落を基礎として、核となる従事者が目標を持って取り組んでいることなどが最低限必要と考えております。このため、現在取り組んでいる集落営農の組織化、法人化に向けた全国運動の中では、規約を有することや一元的に経理すること、主たる従事者が所得目標を持って取り組むことなどを求めております。
いずれにしても、新たな経営安定対策の対象となる経営の具体的要件については、構造改革の加速化の必要性、米政策改革の実施状況などを踏まえ、地域の実情を十分勘案し、今後検討してまいりたいと考えております。
最後に、集落営農に参加できない小規模農家などについてのお尋ねでありますが、担い手として一定の集落営農を位置付ける以上、小規模農家や兼業農家も明確な役割の下に参加し、担い手の一員となっていただきたいと考えております。集落営農に参加できない場合であっても、例えば、農地を担い手に貸し出す、高付加価値農業を行うなどして営農活動を継続するなどの選択をすることにより、地域の農業で一定の役割を担うことは可能であります。また、生きがいを求めて悠々自適な農業を行うこともできます。
なお、農政上も、例えば、中山間地域対策や地域における生活環境整備などについては、小規模農家や兼業農家も対象となり得るものと考えております。
■尾辻秀久 厚生労働大臣■
米国産牛肉の輸入再開についてお尋ねがございました。
米国産牛肉の輸入再開に当たりましては、国民の健康保護を大前提に科学的知見に基づき対処することが基本であり、我が国に輸入される米国産牛肉が我が国と同等の安全性が確保されているかについて、食品安全委員会に諮問することといたしております。
今後、農林水産省と連携しながら、飼料規制に関する情報を含め、米国産牛肉の安全性を評価するために必要な情報を食品安全委員会に提供をしていきたいと考えております。
■棚橋泰文 食品安全担当大臣■
米国産の牛肉輸入再開の条件についての諮問に関するお尋ねがありました。
現在、食品安全委員会におきましては、BSEの国内対策について議論を進め、報告案に関する意見、情報の募集を行っているところであります。したがって、米国産牛肉の問題についてお答えすることは適当ではないと考えております。
いずれにいたしましても、食品安全委員会においては、今後とも中立公正な立場から科学的知見に基づき食品健康影響評価が行われるものと考えております。
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