参議院農林水産委員会−

−「農政改革3法案(担い手新法ほか)に対する質疑」−
平成18年6月1日(木)
■松下新平■
 民主党・新緑風会の松下新平です。クールビズの格好ですけれども、地元から農政に関して切実な訴えを預かってきておりますので、熱い議論をしてまいりたいと思っております。
 法案に入ります前に、私から、BSE、米国産牛肉輸入再再開の問題につきまして質問を二、三させていただきたいと思います。
 午前中、野村委員の方から御質問がありまして、現状について報告がなされたところであります。私からは、この委員会でも与野党から質問がありました、事前の査察は必ずやるべきだと。それに対して大臣も前向きな答弁をいただいているところであります。午前中、野村委員の質問の中で、リスクコミュニケーション、今日から始まるわけですけれども、それ前に事前の査察は決定しておいた方がよかったんじゃないか、私も同感であります。ただ、聞きますと、この日本側の事前の査察は当然日本側のリスクもあるわけで、責任問題を気にしているのではないかという指摘もされております。
 今月あるいは来月には再々開が決定されると報道されておりますけれども、この時点で事前の査察についていま一度お考えをお伺いしたいと思っております。
■中川坦 消費・安全局長■
 米国産牛肉の輸入再開問題につきましては、先生もおっしゃいましたように、国会でのこれまでの御議論、それから四月にも消費者の方々と意見交換会を既にやっておりますけれども、そこで出されました消費者の方々などの意見なども踏まえまして、先般の五月の十七日から十九日まで三日間掛けて行いました日米の専門家会合におきまして、この輸入手続再開のための必要な措置として日本側が今考えていること、その一つとして、対日輸出認定施設の事前の確認調査は是非行いたいということでアメリカ側に日本側の考え方は伝えたところでございます。
 こういったことも含めまして、再々開に至ります際に必要と考えている事柄について、今日から始まりました意見交換会で改めて消費者の方々に説明をし、また御意見をいただくということを今やろうとしているわけでございまして、その意見交換会の、出されました意見なども踏まえて、改めてアメリカ側と再開手続についての調整を行いたいというふうに考えております。
■松下新平■
 前向きに受け止めさせていただきたいと思っております。当然、このリスクコミュニケーションでもその強い要望が予想されるわけであります。
 さらに、午前中の議論の中で、やはり同じケースがあった場合にはどうかというのがありました。そのときに答弁の中で、家畜伝染病の法案の四十条ですかね、それに基づいて一月の段階と同じように判断するということでありましたけれども、私は、この政治判断、今までの判断と同じではいけないという考えに立っております。
 それは、そもそも昨年の十二月の輸入再開のときには、やはり再開を急ぐ余り、事前の査察がなかったとか情報開示が徹底されてなかった、そういう不信、不安の中でのスタートで、そして一か月後の危険部位の混入であったわけです。ですから、予想もされない中で、その影響の大きさからすべてのパッカーからの輸入を停止したという経緯があったと思います。
 私は、そのときの答弁として、第一次的には米国側だと、日本には責任がない、そういった答弁もあったわけですけれども、同じ過ちを繰り返すわけにはいきませんし、人間のやることですから、決してミスがないということも断言できないわけであります。ならば、どう対応するかということを考える、それが政治判断だと思っております。どうも日本の政治家は政治判断を避けてきて、いわゆる科学的知見だとか専門家の意見とか、そういうふうに言ってきた嫌いがありますけれども、これは国際的な信頼を著しく低下しておる現状があります。
 そこで、私は、この輸入再々開に当たっては、同じケース、故意に混入するということもあるかもしれません、あるいは想定されないケースがあるかもしれません。そのときに、やはり今まで全部停止したから停止だということでは米国側も納得されないでしょうし、国際的な基準からも大きく逸脱するものだと思います。
 そこで、先ほど申しましたように、事前の査察、そして情報公開の徹底をすれば、国民の皆さんの安心、安全、そして信頼をかち得れば、それは違う政治判断が当然行われると思います。違う判断といいますのは、すべて止めるのではなくて、ミスをしたパッカーからの輸入停止という判断もあると思っております。そのことは、私も昨年、米国のパッカーの視察をしてまいりましたし、今年連休中にもワシントンに渡りまして米国の牛肉、畜産業界の皆さんとの意見交換もしてまいりましたときに、意識の差が相当ありますし、出された資料がこちらで見るのと全く違うという状況があります。
 そういう中では、なかなか、二国間の問題ですけれども、これから想定される、あるいは予期せぬこと、そのときにまた同じ轍を踏むんじゃないかという心配から、日本側も積極的に同じ轍を踏まないことも考えるべきだという立場に立っておりますので、やはり混入したから同じ対応をするというのは政治判断としてはおかしいということを指摘しておきたいと思います。
 さらに、私はこのBSE問題はしっかり検証をすべきだというふうに思っております。今、長々と申し上げたことも含めて、今までは事が起きたときには隠ぺいの体質がありました。なるべく情報を出さないであらしが過ぎるのをずっと待っているという。確かに、いろんな過去の歴史から、風評被害もありましたし、それによって被害を受ける方も出てくるわけですから、時代によってはそれが選択として認められた、最良だったという時代もあったかもしれませんけれども、現代のような情報公開によっては明らかにマイナスであります。今回のBSE問題が正にいい例でありまして、いわゆる全頭検査を導入したときのいきさつは、やはり行政不信でありました。隠ぺい体質の中で行政不信が募って、それでどうしようもできない国内事情があって超法規的に全頭検査を導入したわけです。
 私はそのことを評価する発言もしてまいりましたけれども、ただ、それは条件としては、一貫してそのことを日本政府として位置付けて行動していくことでありました。しかし、その後、全頭検査を緩和してまいりましたし、その後の、詳しくは申し上げませんけれども、ダブルスタンダードの方法、手法は、私は、この全頭検査が将来こういうことまで想定しての政治判断ではなかった、場当たり的な目先だけの判断だったということを指摘せざるを得ないわけであります。
 この政治判断、これから食の安心、安全と国民の関心が高まれば高まるほどいろんな問題が発生してまいりますので、このBSEの問題はしっかり検証して、特に私が申し上げたいのは情報公開であります。
 この委員会でも申し上げましたけれども、輸入再開のときの輸入申請書も黒塗りでした。そして、これは厚生労働省と農林水産省が二十五か所パッカー視察したときの報告書ですけれども、このように黒く塗りつぶされております。こういった考えでは、また同じ轍を踏むことになります。このBSE問題に関して全頭検査を、そして規制を緩和するということが科学的知見に基づくという、つじつまを合わせることだけでも大変な労力とコスト、そして多くの不安感も起こしたわけでありますので、是非ともこのBSE問題、米国産牛肉輸入再々開については今月、来月と言われておりますけれども、是非このしっかりした検証をすべきだと思っておりますけれども、大臣の御見解をお願いいたします。
■中川昭一 農林水産大臣■
 今、松下委員から多岐にわたる御質問がございました。全部をフォローしなければ、後でまた御指摘いただきたいと思いますけれども。
 二〇〇一年の九月に日本で初めてBSEが国内牛で確認をされて、あのときは、率直に申し上げればまさかという感じで受け止めたわけでございます。したがいまして、当時は政府におきましても、また少なくとも私の所属している党におきましても、大変なある意味では混乱の中で、しかし関係者、とりわけ消費者の皆さん、それから生産者の皆さん、あるいはまた流通、あるいは食品関係の皆さん方の御意見も聞きながら、どういうふうにしていったらいいのかということで、連日対応を政府と相談をしていたことを今思い出しております。
 そういう中で、全頭検査というふうにしたわけでございます。当時は根拠法がございませんでしたので、これはあくまでも国際獣疫機関、OIEの、日本が加盟しておりますこの国際機関のやり方、あるいは各国の、ヨーロッパ、イギリスなんかはもう既に多数の例があったわけでございますから、各国の例等を参考にしながら、ある意味では世界でも一番厳しい対応を取ったところでございます。その後、このBSE特別法等が制定をされて、今は法律あるいはまた政令その他でもってやっているわけでございます。
 他方、二〇〇三年の十二月ですか、アメリカでBSEが発生をして、米国産の牛肉の輸入をストップしたわけでございます。ということで、それからの手続を食品安全委員会等々が、設立いたしまして、リスク評価については科学的な専門家の先生方の御判断にゆだねると。そして、リスク管理機関である行政の厚生労働省と農林水産省においてその運用を図るという体制ができ上がったところでございます。
 松下委員が先ほどから何回かお使いになっておられます、その政治的な判断が必要ではないかということが、ちょっと私にはいまいち理解ができないわけでございますけれども、政治判断をせずに専門家に任せるのはいかがなものかというような御趣旨の御判断がありましたが、まさしくまだ原因がよく分からないとか、また感染がよく科学的に究明されていないというような、非常にまだ新しい、未知の動物あるいは人間に感染する可能性のある異常プリオンの出来事でありますので、これは我々が判断する以前に、科学的にすら解明されていないものでありますから、これについてはやはり専門家の皆さんの御判断、つまりリスク評価は食品安全委員会の、特にプリオン小委員会の先生方の御判断にお任せをするというのが私は妥当なことではないかというふうに思っております。その結果、アメリカの牛肉の再開につきましては、EVプログラムが遵守されれば日米のリスクの差は極めて小さいという答申をいただきましたので、それを踏まえまして十二月の十二日に輸入を再開をしたところでございます。
 確かに、EVプログラムに基づいてきちっとやっているかどうかを日本側において事前に施設をチェックすればよかったという御議論も、予算委員会でも大変いろいろな御意見があったところでございます。そして、一月の二十日にああいう形で再び輸入禁止をしたところでございます。
 我々としては、御指摘のように、原因の徹底究明、それから再発防止ということを目標として、日米間で、あるいはまた米国は米国で、日本は日本で作業をしているところでございまして、御指摘のように、同じ轍を二度と踏まないようにということは言うまでもございません。と同時に、御指摘のように、ミスは人間がやることだから起こり得るということも、それは絶対ないというふうに私も断言できるほどの自信はございませんし、リスクは常にあるという前提でこれからもリスク管理機関としての行政をやっていかなければならないというふうに思っております。
 情報公開につきましては御指摘のとおりでございまして、我々としては、特に食の安全、安心にかかわる問題でございますから、ユーザーであります国民に対して、特に安全という観点からできるだけの情報公開をしていかなければならないと思っております。ただ、これはアメリカ側の情報をこちら側が提供を受けるということでございますし、アメリカ側においても個人あるいはまた企業の情報が保護されるという部分もあるわけでございますから、それとの整合性において、御指摘のような黒塗りの部分を、黒く塗ってお出しをしなければいけなかったということも事実でございました。
 いずれにいたしましても、今後、本日から説明会を順次行っていっておるところでございまして、我々といたしましては、その説明会に全力を挙げて、きちっと御説明を申し上げるということに今全力を挙げているところでございまして、その後どういうふうにするか、あるいはどういうふうに政治判断をするかということについては、申し訳ございませんが、政治判断をする考えは現時点においては一切ございませんで、一つずつ粛々とリスク管理機関としての技術的見地に立った再発防止のための作業の一つとして現在説明会を行い、十四日に十か所終わった段階で次に何をするかということを我々としては考えていくということが、リスク管理機関の行政に与えられた政治判断の入る余地のない我々の作業だというふうに御理解をいただきたいと思います。
■松下新平■
 御丁寧な答弁をいただきましたので、これ以上申し上げませんけれども、一点だけ、私が使いました政治判断というのは、輸入を止める、そして輸入を再開するという政治判断です。政治判断するためにいろんな材料があります。それは今回のリスクコミュニケーションもそうですし、プリオン専門委員会のいろんな科学的知見からの判断というのを踏まえてという意味ですので、よろしくお願いいたします。
 国内では二十七例BSE発生しておりますけれども、当初のような混乱はなく、整然と対応をしていただいております。これは正に情報公開によって、そして国民の皆さんとの信頼関係によってかち得たものだと思いますので、これも是非参考にしていただいて、今後の対応に取り組んでいただきたいと思っております。
 それでは本題に移りたいと思います。
 昨日の参考人質疑、あるいは衆参での質疑が行われました。また、私の地元宮崎では四月十九日に、衆議院の方ですけれども、農林水産常任委員会の地方公聴会を開催されております。そこでのやり取り、あるいは地元での声をいただいておりますので、質問をさせていただきたいと思います。たくさんそれぞれの選挙区の先生方からも御意見が出ました。一部重複するところもありますけれども、御理解いただきたいと思います。私の質問は、今回の小川理事の考えでもあります懸念材料を浮き彫りにして課題を認識していただくというスタンスに基づいて質問をいたしますので、よろしくお願いいたします。
 先日、日本農業新聞のアンケート、ちょうど見開き、大々的に載っておりましたけれども、そこで現在の暮らしぶり、そして農政についてのアンケートがなされておりました。小泉政権下で自分たちの暮らしは良くなっていないという厳しい評価が伺えました。特に、農業政策には目ぼしい政策はありませんでした。その上、地方は特に公共事業も大きく減らされております。小泉改革で地方と中央の格差を身をもって感じている農業者の姿が浮かび上がっております。
 今回の法案は、農業に意欲と能力があって一定の基準を満たした担い手に対して政策支援を集中するものであります。いろいろ質疑でもありましたけれども、農政の大転換ということでこの疲弊した農村の救世主として大きな期待が寄せられていたはずであったんですけれども、この参議院の質疑を聞いているだけでも本当に心もとないというのが正直な感想であります。
 そもそもこの農業というものの考え方なんですけれども、これは先輩議員もこの場でも何度も発言されていらっしゃいますが、大変リスクの大きい産業であります。自然環境の影響もそうですし、外交、貿易の問題もございます。しかし、市場原理に任せておいても今のような状態を更に加速するばかりですので、この農業、国の基としての農業をどう考えていくかというのはそれぞれの国の中心的な課題として取り組まれておりますし、食糧自給率と併せて先進国に見習うところもたくさんあると思います。多面的な機能、これはもう言い尽くされておりますけれども、これを実践していくことが今の日本の農村、農業に本当の意味での救世主になると思っておりますので、このことをちょっとお話をさせていただきたいと思います。
 申し上げましたように、少々の対策では焼け石に水で、相当思い切った政策が必要であるとの認識から、EU型、米国型の直接支払制度の導入を主張してまいりました。特に、米国の事実上の不足払い制度が注目されております。これは、再生産価格である目標価格を設けて、市場価格との差を直接支払や融資などによって補てんするものであります。米国農業はこの手厚い保護制度によって輸出競争力を維持しております。国内農家の経営が守られているわけであります。米政府はこの予算を増やし続けております。WTO農業交渉で国際的に非難を浴びていることもありますけれども、やはり国の基ということで改める姿勢はありません。むしろ農業協定で合法化を目指しているという話も聞くわけであります。
 私は、今回の法案が通ると、この日本の農業の抜本的な改革が行われないんじゃないかと危惧をしております。そこで、これまで議論もされてきているわけでございますけれども、私は、申し上げましたように、この直接支払制度の導入なくして食糧自給率の向上、そして日本の農業の未来が明るくなるということは自信持って言えないんじゃないかという考えを持っております。このことについて、今回の法案を提出されたこと、その兼ね合いで基本的な認識をお伺いしたいと思います。
■中川昭一 農林水産大臣■
 御指摘のように、日本の農政あるいは農業が抱えている問題というのはたくさんあるわけでございます。他方、安ければ外国から輸入すればいいじゃないかと、日本に農業なんかなくてもいいじゃないかという議論は私は日本国内にはほとんどない。むしろ、これから自給率の向上も大事ですし、安全、安心なおいしいものをもっと顔の見える日本の農業者の皆さんに作ってもらいたい、そして子供の健康のためにも、子供の発育のためにも自然と触れ合いたいという多面的なニーズを我々は背負いながら今後の施策を進めていかなければならないと。そういう意味では、私も当委員会の委員の皆様方も同じような責任と誇りを共有できるのではないかというふうに思います。しかし、そのためにやるべきことは大変難しく、またいろいろあるんだろうと思います。
 そういう意味で、我々としては日本の食料供給という観点からも、あるいはまた農業、農村が果たす多面的な役割のためにも、それらを担う関係者の皆さん方に更に頑張っていただける強い形態になってもらいたいという目的でこの施策を導入させていただきたいというふうに考えております。
 御指摘のように、アメリカにおいてもヨーロッパにおいても、こういう形での、まあ何色かは別にして、農業あるいは農家に対する支援というものは少なくとも先進国ではやっているわけであります。
 実は途上国でもやりたいんだという話をよくWTOで聞きます。自分たちだって自分たちの農業を発展させたいから国が支援をしたいんだけれども、でも財源がないんだと。ある意味ではうらやましい、だからこそ貿易歪曲的なんだと、こういう議論で、WTOでよく途上国から日本も含めて責められることがあるわけでございます。
 しかし、我々としては、これはWTO上の基本部分は整合性があるというふうに思っておりますので、これを導入して日本の食料を消費者のニーズにこたえられるという方向で少しでもアップしていきたい、また、冒頭に申し上げたように、農業、農村の果たす多面的な役割を更に増進させていきたいという目標実現のためにいろいろな施策をこの中でやっていきたいと思っておりまして、そういう趣旨でこの法案を御審議をいただいているところでございます。
■松下新平■
 従来、特に都市部の皆さんから言われていたのは、農政はばらまきではないかと。農政だけばらまいて、そして仕事をしてないで、まあ減反ですけれども、お金だけもらっているとかいう批判もありました。しかし、私は、直接支払制度も税金でありますし、納税者の皆さんの理解が何よりも必要でありますから、この多面的機能、国土保全の機能はあらゆる機会を通じて訴えてまいりたいと思います。今、地方が、農村が壊れ掛けております。これは日本の再生にも大きな支障を来すわけですから、このことはあらゆる機会を通じて訴えてまいりたいと思っております。
   〔委員長退席、理事常田享詳君着席〕
 次の質問に参ります。
 今回の法案は、これまで品目の価格に着目して支払われていた所得補償を経営に着目して支払うことに変更するという仕組み、発想の大転換の法案でございます。
 これは、WTOでの輸出入の交渉が進んでいることによって、農業も国際的な競争の中で勝ち抜いていく体力が求められていることになったことが理由と説明されました。当然そういうこともあると思いますけれども、それだけではなくて、実は国内の財政的な問題が大きくかかわっていると思います。農業の構造改革を行わなければならなくなったという面もあるのではないのでしょうか。これまでの品目ごとの価格保証による経営安定対策ではなくて品目横断的な経営安定対策へと変更し、やる気と能力のある農家に施策を集中すると言われておりますが、これまでの全農家を対象とした施策を一定の農業者に集中せざるを得ない理由が国にはあるのではないでしょうか。それは財政の問題ではないでしょうか。そのためには全農業者ではなく、やる気と能力のある農家になれなかった農家は農業から退場しても構わないという競争原理、格差の導入を農業にも持ち込もうというものではないでしょうか。
 小泉内閣によって我が国農業が壊滅状態になったと言われないように、以下の質問を通じて問題点を指摘したいと思います。
 集落営農や認定農業者に農地を集積するということで施策や予算も集中的に行うということですが、それには大きな問題があると考えられます。我が国農業者の場合は家族経営が少なくありません。また、兼業農家や土地持ちの非農家なども地域に多く存在いたします。これら農家では、土地について代々守っていかなければならないとか自分の土地を人に任せるのは嫌だとか、又は相続の問題などで他人に預けるなどはできないといった、土地の利用に関しては意識がかたくななところもございます。簡単にはいかないわけであります。
 そうしたいろいろな条件の農家の方々に今回の担い手の集中、特に農地の集積という課題について理解していただくことは相当の努力と時間が必要であると思われます。これでは集落営農が対象となるための地域の農用地の三分の二以上の利用の集積を目標とするという要件を地域で満たすことは現実には難しいのではないでしょうか。実際に説明を受ける側が理解できないばかりか、行政やJAといった説明する側も指摘がされましたように事務的で十分に理解していないという問題も起こっていて、現場では相当混乱しているという声も聞きます。施策の内容について正確な情報を伝えるには時間が短過ぎる、急ごしらえの体制であるとの指摘がございます。このような状態で来年度からの施策のスタート時点ではどの程度の担い手が確保できると考えていらっしゃるのでしょうか。
 農水省は見通しを示すことは困難であるという姿勢を取られておりますけれども、もう来年ですからある程度の数字ぐらいは推計されているべきだと思いますが、是非お示しいただきたいと思います。
■井出道雄 経営局長■
 品目横断的経営安定対策の対象につきましては、衆参両院の審議におきまして一定の前提を置いたとして、こういうことかということはお示しをしております。それは経営耕地が都府県では四ヘクタール、北海道では十ヘクタールといった一定の前提を置きまして、これに所得特例等の各種の特例がございますけれども、これは加味をしませんで考えた場合には、現時点におきましては対象者の割合は三割程度、対象面積の割合は五割程度と試算されると申し上げております。
 ただ、これは繰り返しになりますが、所得特例や地域特例といった特例による参加者というものはカウントしておりませんし、今後の担い手育成の取組の進展度合いによりまして大きく変わるということで、対策導入時における対象者数、対象面積を正確に見通すというのはやはり困難でございます。
 〔理事常田享詳君退席、委員長着席〕
 いずれにしましても、現在農業者団体とも手を携えまして一生懸命担い手づくりに励んでいるわけでございますので、十九年産からの対策の円滑な導入に向けて更にこの意欲と能力のある担い手の育成確保に全力で取り組んでまいります。
■松下新平■
 具体的な数字はお示しいただけませんでした。短期間で無理やりに担い手をつくってもやはりひずみが出るのではないかと心配をしております。
 本施策の対象となる集落営農組織とは、将来的に効率的で安定した経営を行うことができるような特定農業団体、又は特定農業団体と同様の要件を満たす組織とされております。その要件は農業生産法人化を目指す地域の三分の二以上の農用地の利用の集積を目標とするなどとされておりますが、数年後にはやはり無理あるので集落営農から離脱したいという農家が出てきたとき、要件は満たせなくなることも考えられます。悲観的な見方かもしれませんが、これも実際、現場からの切実な声であります。
 そうした場合を想定して、農水省としての指導なり対処策なりは準備されていらっしゃるのでしょうか。もしあればお示しいただきたいと思います。
■井出道雄 経営局長■
 今委員御指摘のとおり、この対策の対象となります集落営農組織につきましては、規約作成、経理の一元化を始めとする五つの要件というものを満たすことが必要とされております。
 この集落営農の組織化、法人化に当たりましては、従来から国として普及指導員等の指導者を育成するための研修会等を開催するなど支援を行ってきたわけでありますが、この十八年度予算でも、先ほど来御説明をいたしております、集落リーダーを発掘してその調整活動を支援するということで二十億円の予算も計上し、さらに集落営農の中で会計責任者を育成するとか、JAの会計システムを活用して支援システムをつくるとか、あるいはこういった集落営農組織にも集落で使える大規模な農業機械の導入についても支援をするというような措置を十八年度予算で講じております。
 御指摘のように、その要件を満たさなくなるということについては非常に、あってはならないことでありますから、いったん集落営農組織として立ち上がりましても、その後も、その立ち上げについて、現在地域の担い手協議会を軸にいたしまして、普及所あるいは市町村、JAの職員がチームを組んでサポート体制を取っているわけでございますが、でき上がりました後も、この五要件のうち三つは目標でございますから、目標に向かって進んでいかなきゃならないわけでございまして、そういったものについて、集落リーダー、先ほど申しました三千数百名の集落リーダーもお願いしておりますけれども、こういった方々が集落営農組織の運営をサポートしたり、組織化に寄与した現場の普及指導員等が助言、指導を行うということによりまして、こういった立ち上がったばかりの集落営農組織が要件を欠くことにならないように、これを未然に防ぐ活動をしっかり展開したいと考えております。
■松下新平■
 いろいろ、地元の声ですのでよろしくお願いいたします。
 いずれにいたしましても、元々の農家単位の耕地面積が大きい平場地域では、担い手の農地の利用集積は割とスムーズにいくということが今までも出てまいりました。集落営農にしても、そういった地域であれば参加する農家戸数が少なくても要件を満たせるわけですけれども、中山間地はこうはいきません。中山間地では農家が所有する農地面積が元々小さいために、ある程度まとまった農家戸数が参加することが必要となってくるわけであります。知事による規模要件の特例という措置もありますけれども、これも緩和された集落営農の要件まで農地利用集積が届かないことも考えられます。また、こうした地域では効率化が思うようにできず、農業所得の目標などもそれほど多く設定できないことも考えられます。それでは、そのような土地、農家の特性を持った地域は切り捨てられることとなってしまうのではないかと心配しております。
 集落営農の要件の弾力的な運用が行われることがそれぞれの地元からも特に要望されておりますので、是非とも前向きな御答弁をお願いいたします。
■井出道雄 経営局長■
 中山間地域等の集落営農組織につきましては、今委員からも一部御指摘がございましたけれども、集落内の農地が少ない場合ということで、基本原則の五割、十ヘクタールまで緩和できるという措置を講じておりますし、一方、その地域の生産調整を担っている組織、転作集団でございますが、そういったものが中山間地域であってもございますれば、その地域の生産調整面積の過半を受託を受けておる組織については、その地域の生産調整率を掛けまして四ヘクタールまで緩和できるというふうに措置をいたしております。
 また、集落営農組織も、例えば島根県が非常に進めておられますけれども、それを飛び越して集落営農組織を農業生産法人化をするということになりますと、これは法人として認定農業者になりますので、これは四ヘクタールで個別経営の規模要件を満たすということにもなりまして、そういうことで、原則を緩和するだけでなく、生産調整を受託する集団として、あるいは農業生産法人化をするというような方策も許されているわけでございます。
 さらに、広島県等で行われておりますけれども、隣接の集落と合わせて一定の要件を満たす組織を作っていくと。また、それをコアに更に中山間地の集落営農組織を拡大していくというようなこともなされておりますので、そういった種々の方策によって門戸は開かれていると考えております。
■松下新平■
 次に、これも地元からの声であります。
 長年、政府が取ってきた生産調整施策などに対応して、農家が経営の安定化に早く取り組んで成果を上げてきた先進的なケースがございます。こうした専業の農家は、それぞれ努力されて競争力も高いわけであります。ただし、それらの中には米作をやめて畜産や果樹に生産品目を切り替えられたところが多く、これら農家は、本案では対象五品目でもなく田や畑でもないために品目横断的経営安定対策の対象とならず、品目横断の交付金が受けられなくなります。品目別経営安定対策も残るということですが、農水省の掲げる担い手への施策の集中という流れの中では、こうした品目の生産農家で担い手となれないものは将来的に横に置いていかれるのではないかという不安も感じているのではないかと思います。
 その中で、対象五品目以外を主要品目としている複合農家への考え方をお尋ねいたします。
 畜産農家や果樹農家などでは、小規模経営で収益率も高いわけですが、耕地作物の量が少なく、特に米や麦、大豆といった対象五品目を作っていても量が極めて少量なために収入の二七%を超えることは困難でございます。これら畜産・果樹農家がやはり今回の施策の対象者となっておきたいと考えたときにはどのような方法が考えられるのでしょうか。例えば、こうした農家が保有している米や麦、大豆を生産するための農地を少量ずつでも持ち寄って、場合によっては数十軒が集まることもあるでしょうが、どうにか四ヘクタール以上にしてこの対象作物を作る認定農業者に耕作してもらうということで施策の対象者となることもやり方としては考えられると思います。
 こうした要望も地元から多いので、是非要件の弾力化の中で検討していただきたいと思うのですが、農水省としてこういったケースを含めることも考えられるか、お伺いいたします。
■井出道雄 経営局長■
 今お尋ねの畜産農家ですとか果樹農家については、現在ではほとんどの方が部門専業といいますか、ほとんど酪農あるいは果樹作で食べておられるという経営体が非常に多いと思います。その酪農、畜産、果樹の経営そのものについては、これは今回の品目横断的経営安定対策とは別に、個別の畜産対策、果樹対策、野菜対策として別途価格対策その他の経営安定対策が従来からも講じられておりますが、これはその分野として継続されるということにまずなっております。
 それから、こういった酪農、果樹農家等について、一部その土地利用型農業、米、麦、大豆も作っておられるというような経営体につきましては、いわゆる所得特例というものを講じておりまして、この特例につきましては、市町村が定める基本構想におきまして、近傍のサラリーマン世帯並みの所得を確保するということで、例えば四、五百万とか五、六百万とか、構想が決められておりますが、それの過半の農業所得を、これはもう果樹でも酪農でも何でも結構なんですが、農業から全体から上げておられるということが一つの要件と、もう一つは、その対象となる米、麦、大豆の収入所得、経営規模が全体のおおむね三分の一以上ということになっておりまして、収入所得が三分の一なくても、経営規模が三分の一以上であればよいと。
 ということは、例えば果樹をやっていらっしゃるとか野菜をやっていらっしゃる農家で、例えばの例でございますが、一・五ヘクタールの規模であったと。それで、一ヘクタールの果樹園とか野菜畑を持っておられまして、五十アールで米作っていると。全体としては一・五ヘクタールでございますけれども、こういう人たちが、全体としてその地域で五百万というのが基本構想の目標所得であるのに対して、二百五十万とか三百万の所得を既に上げておられて、そういう経営規模も先ほど申し上げたような規模であれば、一・五ヘクタールの規模であっても五十アール米作っておれば、これは対象になるということでございまして、いわゆる果樹地帯とか野菜地帯とか、そういう地帯では、この所得特例を活用していただくことによってかなりの農家が対象農家になってこられるというふうに考えております。
■松下新平■
 最後の質問になります。
 集落営農での農用地利用集積をした場合に、効率化として経営改善努力の観点からは基盤整備事業や圃場整備事業が有効かつ必要であると思われます。特に、広い平野部の多い地域であれば田の一枚当たりの広さも大きく、集積した場合も圃場整備などにより効率化することは割合とよいのではないかと思われます。ある程度の整備は既に行われているところが多いでしょう。しかし、中山間地の多い九州などでは、棚田のような地形のところもあれば、そうした中山間地で圃場整備も行われていないために、田の一枚当たりの広さが狭くて集積も困難なところも多くございます。
 認定農業者に農地を集積しようということですが、中山間地では全体の耕地面積も狭いが、区画整理ができておらず、一枚当たりの田の面積も小さいところが多いわけであります。一件の農家が所有する田の枚数は、数十枚となる場合もございます。そうした条件の下で認定農業者に四ヘクタールの農地を集積しても、実際は取り組めない、そういうところが中山間地には多いと思われますが、この法律で、中山間地のような整備のできてない農地を持つ農業者は農業を辞めろということなのでしょうか。中山間地などでは耕作放棄地が増えてもよい、そういうお考えなのでしょうか。お伺いいたします。
■井出道雄 経営局長■
 先ほどお答えいたしましたように、中山間地域については、集落営農組織を作る場合でもかなり面積要件を思い切って緩和をいたしておりますし、それに生産調整を実施する集団を組み合わせるとか、あるいはその集団を飛び越えて農業生産法人化した場合には、これは認定農業者になりますから四ヘクタールで結構でございますということになりまして、そういう意味では、中山間地においても本対策の対象になり得ることは当然でございます。
 現に、先ほども御紹介いたしましたが、島根県では、そういう特定農業法人という形で集落全体として八ヘクタールとか六ヘクタールしかないと。私も行ってそのリーダーの方にお会いしてお話を聞いたところがありますが、そういうところで特定農業法人化をされて対象者になったということも、島根県ではそれがかなりの数、今できておりますんで、そういう工夫の余地はあると。で、決して中山間地を見捨てるものではないというふうに考えております。
■松下新平■
 いろいろ申し上げてまいりましたけれども、ほかにも高齢地域の問題ですとか、それぞれ、先ほどありましたけれども、担い手にインセンティブ、それが与えられてない、集落、特に集積の方が大変問題になっているわけであります。限られた時間ですけれども、この委員会でもそういった地域の問題を明らかにして、これから政令、省令の中で具体的にこの法案の運用が決まっていくわけですけれども、更に地域の声を届けてまいりたいと思っております。
 以上で私の質問を終わります。