参議院農林水産委員会−

−日豪EPA交渉等に関する集中審議−
平成18年12月12日(火)
■松下新平■

 民主党・新緑風会の松下新平です。早速質問に移らさせていただきます。
 本日のこの委員会のテーマであります日豪EPA、この件につきましてまず私の意見を申し述べさせていただきます。重複する部分もありますけれども、私は、三点について現段階での交渉に入るべきではないということを申し上げたいと思います。
 まず第一に、先日発表されました日豪政府の共同研究報告書には日本が交渉で小麦、牛肉など重要品目の関税撤廃の例外化を主張できると盛り込まれています。しかし、豪州はこれまで他国とのFTA締結において関税撤廃の例外化を認めたのは米国の砂糖のみという極めて限定的な例しかございません。大変危惧をしております。FTA交渉の過程で本当に関税撤廃の例外化が実現できるのか、もし交渉が難航すれば本当に再協議できるのか不確実な部分が余りに多い現状であります。
 第二に、豪州との間では既にほとんどの鉱物資源の関税はゼロになっており、工業製品の関税も低率であります。
 第三に、政府が豪州とのFTAの締結を急げば二〇〇七年度から導入予定である品目横断的経営安定対策そのものが無意味になりかねません。たとえ一部農産物で例外化が認められたとしても多くの農産物の関税がゼロにされることで我が国農業は危機に陥り、関連産業、雇用へも甚大な影響を受け、地域の存立も危ぶまれます。
 以上三点の理由で拙速な交渉に反対であります。
 もちろん、私はWTOを補完するFTA自体の推進を否定するものではありません。今年の夏、若手議員交流プログラムのメンバーとして私もオーストラリアを訪問いたしました。日本とオーストラリアは麻生外務大臣が述べられているように、東経百三十五度の線でつながる民主主義の盟友の名のとおり、基本的な価値観と戦略的な関心を共有するパートナーであることも肌で感じました。日豪両国は共にアメリカの同盟国であり、貿易立国としてアジア太平洋地域の安定と繁栄、そして自由で開放的な国際経済システムの維持には絶対的な利害を共有しております。また、日本の国連常任理事国入りでは強力に応援をしてもらえたのが豪州でありました。インドと並んで重要なパートナーとしてこれからますます期待が高まっていると認識しております。
 そうでありますけれども、今回の件は同一には論じられません。安全保障上の日本の食料政策の問題、食料自給率の向上の問題が本当にできるかどうか、緊急かつ重要な課題が未解決のままで、もう数字も出ておりますけれども、大きなダメージが確実に受ける日本の農業は破壊するんじゃないかという状況なのに、なぜ今豪州とのFTAを急がなければならないかを含めて、現在の日本政府のFTA締結の動きには何ら戦略性が見えないと言わざるを得ません。
 先ほど来この委員会でもこの件について触れられております。小斉平当時の政務官が実際オーストラリアでの交渉の生々しい状況も先ほど述べられました。私は当時、責任ある立場でオーストラリアに出向いてこのまま交渉に入ってはいけないと率直に思われて、それを政府に見解としてお持ちだった、それを今回の交渉に入ったということはこの政府の見解を覆すと、覆したと言われても仕方ないんではないかと思っております。大臣は先ほどから勇ましい答弁をされていらっしゃいますけれども、私たちこの委員会のメンバーはそのことをにわかにそうですかというわけにはまいりません。大型台風という表現もされていらっしゃいますけれども、私たちは細心の注意を持って、備えあれば憂いなし、みんなが目を光らしてこのことを注視していきたいと思っております。むしろもっと、内閣不一致と言われることを恐れているんじゃなくて、大臣の強力なメッセージもっともっと発していただきたいということをお願いしたいと思っております。答弁は結構であります。
 続きまして、最近のWTO関連についてお伺いいたします。
 松岡大臣におかれましては、先月、十一月七日のスイス・ジュネーブでWTOのラミー事務局長とドーハ・ラウンドについて会談をされました。そこでの会談の雰囲気、概要、WTOの今後の見通し、その会談の成果について説明をお願いいたします。
 また、農業交渉のファルコナー議長とも会談されましたけれども、その概要についても併せて御説明をお願いします。さらに、その後の十一月三十日から十二月三日の会合及び会談についても併せて御説明をお願いいたします。

■松岡利勝 農林水産大臣■
 松下先生も我々と同じ南九州といいますか、熊本、私は選挙区は隣り合わせでありまして、大体似たようなところだと思っていますが、そういった意味で大体農業に対する先生の御認識と我々の認識も一致していると思っております。
 そこで、勇ましいとさっきおっしゃいましたが、決して勇ましいんじゃなくて、必死と決死だと私は思っているんです。必死、決死の思いでこれはやろうと。先ほども、もう繰り返しませんが、国全体、日本全体としては、これやっぱり外交戦略もありますし、先ほどWTO事務局長の選挙の例も挙げましたけれども、これはやっぱりASEANプラス3、ASEANプラス6、いろんな枠組みの中でお互いが主導権をどう取ろうか、こういうことで競い合っている、そういう中での私は安倍総理のオーストラリア、豪州、まあインドも含めてでありますが、判断だし、そういうまた決断だろうと、このように思いますし、その一員として我々もしっかりやりながらも、しかしまた一方で、この農業分野につきましては豪州との場合は余りにもセンシティビティーな面でこれは問題が大きい、そういうことをしっかりととらえて決死、必死の思いで我々としてもしっかり取り組んでいこうということでございますので、勇ましいというよりは非常にそれと逆な意味で私どもはしっかりやらなきゃならぬということでありますので、是非皆様方の御支援をお願いしたいと思います。
 それから、ラミー事務局長とファルコナー農業交渉議長との会談でありますが、一言で言いますと、今停滞しているこの事態をどう打開するか、これが最大の関心事であります。したがって、ラミー事務局長はラミー事務局長で、そのお立場でいろんな努力をされておられる。まあアメリカとの会談、それからEUとの会談、そのほかいろんな各国、各グループがございます。そういったところの会談を通じてどうやってこの中断を再開に持っていくか。また、特にその中で農業分野が一番またこれ最大の課題。
 結局は、農業分野の対立が、対立というか、まあアメリカがその原因だったわけでありますが、そこが一番の原因で、問題で今中断をいたしておるわけでありますから、全体の再開というのは農業分野の動きにかかわってくると、こういうことで、ラミー事務局長とファルコナー農業交渉議長、非常に重要な役割になっているわけであります。
 そこで一致しましたことは、とにかくアメリカがまず先に動くべきであると、この中断の原因をつくったアメリカが先に何らかの動きの具体的な形を示すべきであると、その点ではもう一致しているんですよ。ただ、同時に、ラミー事務局長は、あわせて、他の主要各国という言葉を使っておりますが、日本やEUやインドもしっかりまた同時に動いてもらいたい、こういう言い方でありました。前段では一致したんですけれども、後段はちょっとお互い認識が違うなと、こういう点であります。
 ただ、ファルコナー議長は、どう進めるかということについて、技術的な点も含めて、農業交渉分野の中でそれぞれグループがございます。日本で言うとG10でありますが、そういった各グループ間で技術的な検討も含めて進めるための作業を詰めてくれ、こういうような観点でありました。
 そこで、また今度、その後の十二月の一日に参りましたIPUのWTO議員会議でございますが、これはカンクンのときから正式に閣僚会合とセットで開かれるようになりまして、言ってみれば、政府だけに任せておくんじゃなくて、やっぱり国民の代表である国会議員がその立場、その責任においてしっかりとこのWTO交渉にも関与していこうと、こういうことを、IPUの中の特に欧州議会、EU議会が提起をいたしまして、それでそういう動きになってきたということでありまして、IPUの中に正式なWTO議員会議というのを、もう規則も作ってできております。日本からは、私もずっと理事ということで、参議院からは若林先生が理事ということで出ておられましたけれども、そういう動きの中で、今回が、WTO議員会議の年次会合があったわけであります。
 私の方にも招待が来たものですから、G6の中の主要な国に対して招待が来たものですから、やっぱりその招待があって、そこにやっぱり行くことが大事でありまして、日本の立場というものをしっかりと表明をしてきたということで、これは、従来からの多様な農業の共存、こういったことを基本にいたしまして、主張をし、訴え、理解を求めてきた、こういうことでございます。
 それから、今後の見通しでございますけれども、アメリカの状況が今先生も御案内のような状況になっておりまして、一月、クリスマスが過ぎて一月が終わって、そしてその時点でどういう議会の動きになっていくのかなというのが一つの注目点だろうと思います。一方で、ジョハンズ農務長官は、一月から二月にかけては新農業法、これを提出をすると言っておりますし、ファストトラックと言っておりますが、交渉権限、議会が政府に交渉権限を与える、このファストトラックのTPAといいますが、これがどういうような扱いになっていくのか、こういったことが年明けと同時にアメリカで動きが始まってくると思います。したがって、そういったことの見極めと同時に、他の国の動きも含めてどういうふうに推移していくのか。
 ただ、ここではっきりしてきたことは、ダボス会議というのが毎年スイスで、ダボスで開かれておりますが、そのダボス会議で、ここを一つの大きな場にしようじゃないかということから、正式に招待状が昨日参りましたけれども、ダボス会議でWTOの非公式会合を開くと。これは六か月ぶりに、中断しておったやつを非公式ながらそこで会合を開くと、こういったような、実はそのことが決まりまして、正式に招待状が参りました。だから、これは一つ大きな節目であり場面になると思っております。
 日本もG10の代表的な立場でもありますし、G6という、このWTOを動かしていく機関車の役でありますG6、G6といいますのはアメリカ、EU、それからブラジル、インド、オーストラリア、日本であります。特に日本は全世界の輸入国の代表と言ってもいい立場でありますが、そういう立場で招待があり参加を求められたということについては重く受け止める必要がある、このように思っております。
■松下新平■

 大幅に時間がなくなりましたけれども。熱意は分かりました。
 次の質問に参ります。
 中間選挙がありまして、このWTOに及ぼす影響というのを心配されるんですけれども、お話にありましたように、ダボス会議、一月二十七日ですかね、決定されたということで、ここにやっぱり大きな関心が寄せられております。特に民主党が、米国民主党ですけれども、自由貿易よりも国内保護を重視する傾向が強いと言われておりますので、交渉再開への道筋が開かれるかどうか注目されておりますので、是非御検討をよろしくお願いしたいと思います。
 次に、農地・水・環境保全向上対策についてお伺いいたします。
 これについては、基礎支援である農地、水など、農業資源保全向上に対する支援が行われていることを条件として上乗せして行われるということになっております。なぜ化学肥料や農薬の使用を大幅に減らす取組単独で支援できないのか。それぞれの活動を併存して支援し、重なる部分については更により支援することとすればよいのではないでしょうか。特に、先日、谷津先生、ツルネンマルテイ先生ほか皆さんの御尽力により、有機農業の推進に関する法律案が成立しました。この法律は有機農業の発展を図ることを目的としており、国及び地方公共団体は有機農業の推進に関する施策を総合的に策定し、実施する責務を有するとしております。
 品目横断的経営対策の環境保全対策の面からも応援すべきと考えますけれども、松岡大臣、いかがでしょうか。

■松岡利勝 農林水産大臣■
 なぜ営農活動だけに支援ができないのかと、こういう御質問だと思いますが、これはもう論理的に言いましても、やっぱり一階があって二階があると、こういうことでありますから、一階を飛ばして二階だけやるというわけにはいかない。これがやっぱり建物を建てる上での論理であります。だから、政策的にもその論理がございまして、これは、中山間の所得補償というのは条件が不利な、そういった中山間の地域に限って、これはいわゆるヨーロッパでいうデカップリング、そういったことでやったわけでありますが、今回のやつはそういう中山間だけではなくて平場も含めて、いわゆる環境面からの直接支払をやろうと、こういうことであります。
 これは世界的なWTO農政の流れもございますし、またいろんな各国の先進例等も踏まえまして私どもはこれをつくったわけですが、やっぱり直接支払ですから、これは国民皆さんに共有できる、こういった観点に立って直接支払が成り立つものですから、まず農地、水、環境がある、そしてさらにその上に二階部分として営農がある、こういう組立てでないと、そこだけを取り出して支援というのはなかなか論理的に難しいと、こういうことでございます。
■松下新平■

 あと二問続けて質問いたします。
 財政面、都道府県は大変この財政措置に苦慮されております。北海道でも要望の三分の一しかできないんじゃないかとか、岩手県では従来の草刈りなどの保全活動は対象としないとか、それぞれ農業新聞に出ただけでもたくさんございます。この問題を指摘しておきます。
 もう一点、中山間地対策、この併給についても都道府県まちまちでございます。これも現場では大変混乱しておりますので、この点について答弁をお願いいたします。

■松岡利勝 農林水産大臣■
 御指摘の点は、私どももそういった問題点、承知をいたしております。
 これは、都道府県によって、特に財政的な面から制約的な意味でそういったようなことが行われるといいますか、なされるといいますか、したがって、その点 につきましては私どもそういったことがないように働き掛けをし、そして財政は地財措置として交付金でしっかりと担保されるようなお願いをしてまいりたいと思っております。
■松下新平■

 最後に、先ほどの谷委員の大臣の答弁、そして副大臣の答弁、私聞いておりまして、一致するという副大臣の答弁でしたけれども、微妙なずれを感じましたけれども、大臣、もう一度お願いいたします。

■松岡利勝 農林水産大臣■
 国井副大臣はまだいろいろと、何といいますかね、最終的な報告の整理がなされるまでの間に自分の個人的な思いも込めて言われたと思っております。そういう意味で、思いとして言われたと思っておりますし、その後の整理がなされて最終報告が出たこの現実の段階におきまして、もし交渉を、開始はまだ決まっておりませんが、そうなって入っていくとすれば、私が申し上げたことと、これは大臣、副大臣とそこにそごはないと、このように思っております。
■松下新平■

 終わります。

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