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−参議院ODA調査派遣団−
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タイ王国・インドネシア共和国派遣団
〜その3:派遣団としての所見(派遣報告書より)〜 |
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1. 東南アジア地域へのODAについて
東南アジア諸国は、我が国と地理的にも近く、従来から深い関係を持ってきており、これまでも多額の援助を行ってきた。これらの国の中には、近年の経済発展により、経済的に自立できる国も登場しているが、なお経済的支援を必要としている国が多い。東南アジア諸国との緊密な関係は、我が国の安全と繁栄にとって非常に重要であり、我が国は、今後とも、共に繁栄する良きパートナーとして、これらの国々が必要とする援助は行っていくべきであろう。
また、今回調査を行ったタイ、インドネシア両国においても、それぞれ事情が異なり、必要とする援助も異なっている。どの国のどの分野にどのような援助を行うことが、我が国のためになり、被援助国のためになるのかをよく検討したうえで、国別援助計画を定め、ODAを効果的に実施する必要がある。
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2. 対タイのODAについて
タイにおいては、急速に経済発展が進み、既に1人当たりGDPが2,000ドルを超え、1993年に無償資金協力の対象国を卒業している。タクシン政権は対外借入には抑制的な態度をとっており、我が国からの円借款は次第に減少してきている。現在の日本からの円借款は、第2バンコク国際空港建設事業の案件ただ1つであり、今のところ、その後の新たな要請はないとのことである。また、借款返済も順調に進んでいる。
タイにおける今回の調査では、有償資金協力案件として、東部臨海計画関連の「レムチャバン商業港建設事業」、「レムチャバン工業団地建設事業」など、7案件を視察した。
東部臨海地域は、日本の協力により開発され、レムチャバン、マプタプット両港を中心に、道路、鉄道、工業団地が計画的に整備されており、一大工業地帯を形成している。今回視察した「レムチャバン商業港」、「レムチャバン工業団地」は、現地の説明では、順調に発展し、タイの経済成長に大きく貢献しているようであり、同地域へのアクセスのための「チョンブリ・パタヤ道路」を含め、概ね所期の目的を達成しているものと思われた。
タイの大きなプロジェクトである「第2バンコク国際空港建設事業」と「バンコク地下鉄建設事業」については、現在建設中または開業したばかりであり、事業効果がどうであるかは現時点では明らかでない。
「第2バンコク国際空港」の建設は、現在までのところ、環境の問題等も特に起きていないということであった。空港が完成すれば、東南アジアでも有数の空港になり、タイの経済発展に寄与することは間違いないであろう。他方で、新空港完成後の現空港の用途、我が国の空港を遙かに凌ぐ規模の空港を我が国の資金協力により建設することの必要性等について疑問が残ったのも事実である。
「バンコク地下鉄」は、開業から間もないこともあり、乗客も多く、順調にスタートを切ったようである。問題は採算性であろう。タイ高速度交通公社総裁は、地下鉄建設の目的はバンコクの交通渋滞解消にあり、将来、地下鉄網が完全に整備されれば1日あたりの利用者数が現在の20万人から180万人になり、コストは低くなると説明したが、採算についての明確な説明を聞くことはできなかった。
JBICによる事後評価で、事業効果が十分発現していないとの指摘があり、また国会でも取り上げられた「首都高速道路ラムイントラ〜アトナロン線」は、指摘のとおり、現在も交通量が計画通り伸びていない。建設に当たって、側道を建設した機関との間で十分な事前調整が必要であったと思われる。タイ政府は、本年7月、ラムイントラから東部外環状道路までの高速道路までの建設計画を閣議決定しており、完成後の交通量の増大に期待している。
有償資金協力以外の案件では、技術協力案件の「水管理システム近代化計画」及び「プライマリー・ヘルスケア・プロジェクト」、草の根・人間の安全保障無償案件の「クロントイ・スラム図書館整備事業」を視察した。いずれの案件も、それぞれの開発ニーズに合った案件であり、関係者から感謝のことばも数多く聞かれ、概ね所期の目的を達成しているものと思われる。
「水管理システム近代化計画」は、タイの農産物の増産に寄与するものと思われるが、一方で、タイと我が国とのFTA交渉では、農産物の自由化が争点となっている。我が国のODAにより発展した産業が、我が国の産業と競合するようになり、新たな貿易上の摩擦を引き起こす、いわゆるブーメラン効果についても留意する必要があろう。
今回調査を行った首都バンコク周辺では、道路、鉄道、港湾、空港などのインフラは、よく整備され、街のメインストリートは高層ビルが立ち並び、日本と同じような様相を見せていた。しかし、高層ビルの裏には多くのスラムが存在しており、人口約600万人のバンコクでは、約1,500か所のスラムに140万人以上の人が暮らし、タイ全体のスラムの数は4,000に及んでいるとも言われ、国民の間に貧富の格差が拡大していることが窺われた。また、今回実地調査はできなかったが、地方の農村部と都市との経済格差も依然として大きい。
タイでは、これらの格差を是正することが課題となっており、今後も援助が必要であるとすれば、我が国の援助も、都市部の経済基盤整備から、地方の開発や貧困対策に重点を移していく必要があろう。
タイのような国に対しては、これからは、資金協力よりも、日本の持つ高い技術、経験、知識、ノウハウ等を生かした技術協力が重要となってくるであろう。また、きめ細かな援助を行うためには、NGOとの緊密な連携の下、NGOによる資金で効果を上げられる草の根・人間の安全保障無償協力によるNGO支援も増やしていく必要があろう。 |
3. 対インドネシアODAについて
インドネシア経済は、1997年のアジア通貨危機から立ち直り、徐々にではあるが回復してきている。しかしながら、インドネシアは、2003年の1人当たりGDPが810ドルと近隣諸国に比べまだ低く、インドネシア経済を、これまでの民間消費に支えられた成長から、民間投資主導の持続的成長に変え、貧困削減につなげていくことが当面の最重要課題となっている。また、長期的には、インドネシアは、これまで極度に集中していた権力や政治・行政・経済体制を改め、民主的で公正な社会造りを推進することが課題となっている。
我が国は、インドネシアを、東アジア経済の発展と安定のために重要な役割を担うASEANの中核国として、また、石油、天然ガス等の天然資源の我が国への供給国として、多額の援助を行ってきた。インドネシアは、これまでの累計では我が国の援助の中で最大の受け取り国となっている。そのため、円借款の貸付残高も2兆円を超える大きなものとなっている。
インドネシアにおける今回の調査では、有償資金協力案件として、「ガジャマダ大学整備事業」、「ジャカルタ漁港整備事業」及び「メラピ火山緊急防災事業」の3案件を、無償資金協力案件として「火山防災技術センター整備計画」を、技術協力案件として「火山地域総合防災プロジェクト」及び「母と子の健康手帳プロジェクト」を、また、青年海外協力隊事業として「ジョグジャカルタ第4実業高校」を視察した。
「ガジャマダ大学整備事業」は、有償資金協力により、校舎等の建設・整備、教育・研究用機器材の調達・整備のほか、大学教官の日本への留学の事業を行っている。日本への留学は概ね好評であり、日本の理解に役立っているようであった。今後、有償資金協力を行うに際しては、いわゆる「箱もの」ばかりでなく、留学事業のような「ソフト面」への活用も考えるべきである。
「火山地域総合防災プロジェクト」、「火山砂防技術センター整備計画」、「メラピ火山緊急防災事業」は、技術協力、無償資金協力、有償資金協力とそれぞれ援助形態は違っているが、有償や無償で建設した施設を使い技術協力を行うなど各事業間の連携によって、効果を上げているようであった。
「ジャカルタ漁港」は、これまでの整備事業により、今や東南アジア有数の漁港となっている。現在、同漁港は、ジャカルタ都市部の地下水汲み上げ等による地盤沈下の影響を受け沈下している岸壁の補修工事を行うリハビリ事業を行っている。水揚げ量で日本の主要漁港と肩を並べるような施設に対し、リハビリ事業とは言え、更に34億円もの円借款を行うことには疑問を感じないわけではないが、これまでの支援を無駄にしないためにも、厳格な資金管理を行うことを条件に、実施することはやむを得ないものと思われる。他方で、ジャカルタ漁港で水揚げされたマグロやエビの多くが日本に空輸され、消費されていることから、同漁港整備事業が果たして本当にインドネシア国民のためになっているのかどうか疑問なしとしない。
「母と子の健康手帳プロジェクト」、「ジョグジャカルタ第4実業高校」では、それぞれ、JICA専門家、青年海外協力隊員の活動を視察した。いずれも、援助ニーズに合っており、所期の目的を十分に達成しているものと思われた。専門家や協力隊員の派遣事業について、一部にはJICAが独立行政法人になったため、予算を制約され、優秀な人材を海外に派遣することができなくなるのではないかと懸念する声もあるが、工夫次第で人員は確保でき、これらの事業は、今後更に拡大していくべきものと考える。
インドネシアに対しては、我が国は、今後とも、有償、無償の資金協力と技術協力それぞれの特長を生かす形で、援助を行っていく必要があろう。援助の実施に当たっては、国際機関や他のドナー国と支援分野を調整するなどして、効率的に行う必要がある。
また、インドネシアでは、新政権が発足したが、新政権には、我が国がこれまで行ってきた支援を無駄にすることのないよう、民主的で公正な社会造りを一層強力に推進することを期待する。 |
4. 「顔の見える援助」について
今回の視察では、いずれの案件においても、関係者から日本のODAに対し感謝の言葉が述べられた。国民への広報については、バンコク地下鉄のすべての駅に日本の資金協力によって作られたことを示すプレートが掲げられていたのを始め、マヒドン大学のASEAN保健センターやガジャマダ大学等でプレートが掲げられ、他の施設でも日本のODAマークが見かけられた。
しかし、こうしたプレートやODAマークは、必ずしも自発的に掲げられたものとは限らず、また、すべての案件に掲げられているわけでもない。我が国のODAにより供与された案件が、関係者のみならず広く援助を受ける国の国民に知られるよう、効果的なPRを考える必要があると思われる。
最も「顔の見える援助」と感じられたのは、途上国のために働く日本人の姿であった。地下鉄の建設に携わった技術者、各事業のコンサルタント、JBICやJICAの現地駐在員、専門家、青年海外協力隊員、NGOの日本人スタッフなどの活躍は、関係者に限らず、広く国民に日本のODAを理解してもらうことに大いに役立っているものと思われる。 |
5. 不正防止について
過去には、ODA案件の受注をめぐる不正や不透明性が問題となった。
政府は、新ODA大綱において、不正、腐敗の防止について、「案件の選定及びプロセスの透明性を確保し、不正、腐敗及び目的外使用を防止するための適切な措置を執る。また、外部監査の導入など監査の充実を通じて適正な施行の確保に努める。」との基本方針を定め、不正防止に取り組んでいる。
ガバナンスの悪い途上国では、不正、腐敗が生まれやすい土壌がある。今後とも、不正、腐敗の防止のため、一層チェックを強化し、援助の透明性を確保する必要がある。 |
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