参議院ODA調査派遣団

平成18年度 参議院ODA調査 第4班(アフリカ地域)
報告書
〜その2〜
1.意義目的、概要説明
2.ケニア関係
3.セネガル関係
4.英国関係
5.まとめ
1.意義目的、概要説明
 予算の衆議院に対して決算重視の参議院は、平成16年度からODA(政府開発援助)調査を実施しています。
 3年目の今年度は、4班に分かれてそれぞれ調査を実施しています。
 第4班のアフリカ地域は、昨年度のエジプト、タンザニアに次ぎ、ケニアとセネガルを調査しました。
 メンバーは、自民党 田村公平(高知県選出、2期)議員、自民党 山内俊夫(香川県選出、2期)議員と無所属 松下新平(宮崎県選出 1期)の3名でした。

 ODAは、贈与と円借款(政府貸付)に分類されます。さらに、贈与は無償資金協力と技術協力に分類されます。
 2000年に策定された国別援助計画では、アフリカに対して、次の五分野を重点に挙げています。人材育成、農業開発、経済インフラ整備、保健・医療、環境保全です。

 日本のODAの2004年の実績では、全体で約60億ドル、内訳は、アジア地域に、42.7%、アフリカ地域に10.9%、中南米、大洋州など9.1%、各地域にまたがるもの20.8%です。
 日本のODAは、1999年の約105億ドルをピークに減少しています。
 アフリカ地域53ヶ国のうち、46カ国に援助しており、1位ガーナ、2位ケニア、3位タンザニア、4位セネガル、5位コンゴ民主共和国の順となっています。

 今回視察対象のケニア、セネガルについて諸外国の経済協力実績は、直近の2003年で、ケニアに対しては、全体で、320.3百万ドル(内訳は、1位米国111.2百万ドル、2位英国79.4百万ドル、3位ドイツ35.4百万ドル、4位スウェーデン25.6百万ドル、5位フランス20.5百万ドル、日本は番外で6.6百万ドル)
 1999年から2002年の日本の実績は、1位、2位、2位、4位でしたので、大きく後退しています。
 次に、セネガルに対しては、全体で、314.4百万ドル(内訳は、1位フランス119.5百万ドル、2位米国48.1百万ドル、3位スペイン34.7百万ドル、4位日本28.7百万ドル、5位ドイツ20.5百万ドル)
 1999年から2002年の日本の実績は、2位、2位、3位、2位でしたので、少し後退しています。
 ケニアは、東アフリカにおいて地理的な要衝を占め、政治、経済で指導的役割を果たしており、地域の平和と安定に貢献しています。我が国との関係も良好であり、安定的な関係を維持・発展していく意義は大きいものがあります。
 無償資金協力及び技術協力が支援の中心となっています。現在実施中のソンドウ・ミリウ水力発電計画後の円借款供与については、ケニア政府が自助努力による債務返済への意思を明確にしていることを踏まえ、現状、汚職対策、債務負担能力などを十分に勘案しつつ援助を検討していくことになります。
 セネガルは、西アフリカの中心国の一つであるとともにアフリカ開発のための新パートナーシップ主要国の一つでもあります。人口増加率の高さ、砂漠化などの多くの開発課題を抱えています。こうした問題に対する取り組みをODAにより支援することは、「貧困削減」「持続的成長」ODA大綱の観点からも意義深いものと思われます。

2.ケニア関係
KEFRI(ケニア森林総合研究所)
 1950年から運営されている歴史のあるケニアの政府機関であり、豊富な種類の植物や昆虫の収集や品種改良、組織培養、土壌改良さらには、エネルギー開発や生活用品開発など約1000名のスタッフで多岐にわたり活動してきています。
 統計の方法にもよりますが、ケニアの森林面積は、1.8%しかないそうです。
 日本のODA支援は、建物を援助しています。また、専門員を派遣し、コンピューター開発などの技術支援に力を注いでいます。
SMASSE(中等理数科教育強化計画)
 ケニアの学校は、8.3.4制だそうですが、ここでは、中学高学年から高校の理数科目の先生に対して教育する期間です。
 カリキュラムは、1年間に2回2週間の実習がありますが、研修所は手狭でした。
 ケニアには、4000の学校があり、2万人の先生、100万人の生徒がいます。
 現在では、この研修所で学んだリーダーがそれぞれの出身地でそのノウハウが伝授されています。また、周辺33カ国へも広がっています。
 ファシリテーション(一方的に教えるのではなく、お互い工夫して作り上げていく手法)の活用による創意工夫。
 また、日本からもたくさんの寄付によって学校が建設されていますが、もともと、国民参加型「ハランベール運動」と言ってみんなの寄付でつくる慣習があり、平行して取り組まれています。
 2003年から義務教育費の無償化がスタートしましたが、現実には、学校も先生も足りません。 もともと、20数年間、日本から技術協力で、理数科の教員が派遣されていて、本事業は、それらの蓄積を元に、アフリカ独自の文化なども勘案し、事業化されたもので価値の高いものです。
少年ケニアの岸田さんとの懇談
 35年前から現地で、日本式、「改良かまど」を普及させた有名なNGOの代表者です。効率的な使用を教える活動が著名です。地味な活動ですが、薪はケニアでは、大変貴重な資源であり、最小限で最大の効果を生むことが人々の生活を一変させ、瞬く間にアフリカ全体に広がっていきました。興味深い話を伺えました。

ソンドウ・ミリウ水力発電事業

 平成13年に、その是非について日本の国会で取り上げられた有名な箇所です。当時は、田中真紀子外相で、鈴木宗男氏が当時、官房副長官としてこの事業について不可解な点を指摘されています。
 衆参常任委員会の議事録を読み返しますと、まず、地元ケニアのNGOが環境問題を取り上げ、日本のNGOも加わりそれを一部マスコミがあおった形になっていました。
 この事業は、20年前に計画されたもので、ビクトリア湖に注ぐソンドウ川における発電設備容量60MW水力発電事業です。
 ケニア全体の発電量は、1083MW(これは、昭和26年の東京電力と同程度、日本全体の400万分の1)
 需要は、884MWと言われていますが、10%予備、20%送電ロス、経済も毎年5%成長しているので、慢性的な電力不足、7割が自家発電機を設置。
 特徴は、「RUN OF RIVER」という工法で、大きなダムをつくるのではなく、高低差のある地形を利用した比較的環境にやさしいものであるとの説明を受けました。
 第1期1997年69.33億円、第2期2004年105.54億円、来年の11月に完成予定ということです。

 他の水力発電と取水する水系が異なり、安定的に、また、ケニア西部の供給に期待が寄せられています。

 委員会の質問で取り上げられました「オディノの滝」は、川沿いに歩いて2時間のところにあり、訪れるのは困難であり、現地の日本人スタッフも誰も行ったことがないそうです。
 NGOによると、神聖な滝で、あるイギリス人がここで亡くなったことがあり、たたりであると伝えられている。
 残念ながら、この目で確認できませんでした。

 環境問題(住民の移転、乾季には、農業や漁業に影響)、生態系は大丈夫か(平均41立方メートルの流量)、アクセス道路のほこり被害、子供のぜんそく、肺病、視力の低下、家畜にも影響、ケニア電力公社の不正など委員会の質問で指摘されたものについては、今回の調査では確認できませんでした。
西部医療地域保健医療サービス向上プロジェクト
 ケニア第4の都市キスムからさらに車で約1.5時間ほど東にキシイと言う都市があります。そこの県立病院を訪問しました。90年前に建設されたもので老朽化がかなり進んでいました。草の根支援で、医療器具が提供されていました。
 この病院は、拠点病院として、290万人の人口をカバーしているそうですが、ベット数にしても絶対数が足りません。

 次に、その病院の傘下に位置する、30分のところにある保健センターを訪問しました。
 これは、提案型で、現地で活動しているNGOからの提案を受けて、実施しているものです。主に、出産時の妊産婦死亡率低減を目指し、保健センターの機能強化、助産婦の研修、地域コミュニティに対する啓蒙活動を行っています。
 2005年3月から2008年2月の事業です。
 風に立つライオンに感銘を受けた将来医師にある学生もインターンして参加していました。
 日本から一番遠いところで活躍する助産師の女性は、宮崎県日向市出身の北川由美子さんでした。お二人とも、少し日焼けされていましたが、澄んだ瞳が印象的でした。
野生生物保全教育強化プロジェクト
 ケニア野生生物公社の自然保護教育に関する実施能力の強化支援で、2005年から2007年の事業です。
 ケニア全土の約10%を占める国立公園は、観光収入も、5.5億ドルに達し、お茶に次ぐ外貨獲得の一大産業となっています。
 この事業は、野生生物の保全をビデオ映像などに収録し、公園と隣接する未開発の部族に教材として活用されています。
ケニア人による按摩体験
 ケニアにも多くの盲目の人いらっしゃいます。そのほとんどは、仕事もなく、誰かに頼っての生活を余儀なくされていました。
 数年前、一人の女性が日本に按摩の研修で来日し、日本の技術を学びました。そして、帰国後、その技術を活かしてナイロビでもと取り組みましたが、すぐにうまくことが運んだわけではありませんでした。試行錯誤を繰り返し、ようやく動き出したと言うのが正直なところだそうです。
 日本式の按摩の普及はこれからですが、有意義な支援でした。

協力隊の皆さんとの懇談

 現在、シニアボランティアも含めて61名の協力隊がナイロビで活躍されています。
 まず、言葉を覚え、こちら側の理解者を増やすため、飲みに行って理解を深め合ったり、危険な状況も現地のかたがたと体験した話などに花が咲きました。
3.セネガル関係
タイバンジャイ村給水事業
 タイバンジャイ村セネガルの首都ダカールから先導車誘導付きでも車で約1時間半かかりました。
 ここでは、給水施設に日本のODAが活躍していました。村を挙げての歓迎ぶりに、村人の喜びが表れていました。
 水汲みから開放された女性たちが、畑を耕して収入を得ることや、識字率が上がり、学校へも通えるようになったそうです。
カヤール水産センター
 水産物流通施設・漁獲物の水揚場、水産物加工施設、漁民支援施設、機材などに支援されていました。
国立保健医療・社会開発学校
 保健人材養成学校、とくに一次医療システムで働く人材の養成能力強化、看護職員を対象とした適切な教育システムの確立、間接的に周辺国の医療従事者不足の緩和に寄与しています。
 2001年から2006年10月事業です。
 日本の技術をそのまま使用するのではなく、現地の皆さんが使いやすいように工夫して活動されていました。
JOCVとの懇談
 現在62名の協力隊が活躍していました。
4.英国関係
英国のODA現状について
 植民地時代の罪償いの色彩もあり、地元宗教関係者の力が大である。このように、政治的、社会的なバックを背景に追い風が吹いている。ODAの活動が票になる環境にある。
 アフリカに対するAIDS問題、債務削減に力を注いできた。
 欧州で、ODAを重視しているのは、デンマーク、オランダであり、逆にイタリアは、経済状況も厳しく、ODAに対する余力がない。
 2007年のGDIに対してミレミアム目標の0.7%実現は厳しいが、EUの目標である2010年の0.5%は達成の見込みである。(日本は、0、19)
 日英の共同事業は、タンザニア支援などうまくいく。
ODAの仕組みの違い
 英国は、よく言えば寛大、悪く言えば、丸投げ状態であることに対して、日本は、円借款もあり、決めこまやかである。これに対して、「なぜ、返せないと分かっているのに貸すのか」との疑問の声もある。
 英国の支援が、病院、学校、水道であるのに対して、日本は、電力や通信などにも力を入れている。また、AIDS問題におけるコンドーム支援など形に残らないものを重視しているのに対して、日本は、顔の見える援助がしばしば議論になる。
 例えば、英国では、フェアトレードと言う考え方が定着している。これは、援助国からのものを積極的に活用しようということ。
 スターバックスでも、フェアトレードラベルのリクエストが多い。大手のスーパーもこれを怠る(売り場面積など)と株主総会で突き上げられる。
 CSR(社会還元)の考え方を重視。
 世界のODAの中で、日本は、長らく世界第1位であったが、米国に抜かれ現在第2位であるが、来年は、4位に転落するだろう。フランス、イギリス、ドイツに抜かれ、2010年には、世界第5位に甘んじることになると予測される。
 日本は、GNIは低いが、額は大きいと主張してきましたが、それも言えなくなります。再来年の日本で開催されるサミットで窮地に追い込まれるであろう。
 英国は、次期大統領候補として名高い財務大臣のゴートン・ブラウン氏がODAを強く推し進めている。また、DAC加盟国では、グローバルな視野を持つのは、英国であり、英国のリーダーである。
 また、貿易の考え方も各国まちまちである。先進国が農業分野に出すお金は、ODAの100倍との指摘もあります。特に、砂糖や熱帯産品(バナナなど)などは、自由化すべきであるとの国際社会の意見が強い。
 英国に対して、エーカッコシーとの見方もありますが、実際やることはやっています。
 また、米国でも内容は別にしてもブッシュ政権下でもODAは増やしています。
 2008年、中東紛争が激化して目を逸らさなければ、日本は厳しい状況に追い込まれるでしょう。中東問題は、それはそれで、困りますが・・・。
 国際機関の重要なポストには英国が入り込んでいます。
 英国は、防衛費、GNI2.2%、外務省は、日本1.5倍、英国軍もイラクへ7500名、アフガニスタン4000名、コソボに1300名派遣し、国内は空っぽの状態であるが、対外関係に予算を組んでいます。
 来年度のODA予算は、政府自民党がマイナス3%を打ち出しています。アフリカ重視の施策が、他を圧迫しています。継続案件が打ち切られるケースがあり、日本の信頼が損なわれるだけではなく、支援の効果も半減してしまっている。
 先進国における文化広報がじゅうようである。
 薪能、アニメ(ピカチュ)など評価が高い。
 日本の技術、テレビの映像やトヨタ車は素晴らしいと再認識されている。
 日英関係の最大の懸案は懸案がないことと締めくくる。
5.まとめ
 貧困の削減のためには、経済成長が必要であり、そのためにインフラの整備を行うことは急がば回れで基本であり、重要であるのが日本の立場です。また、草の根支援など日本ならではのきめ細やかな支援が大きな成果を生み出していました。
 発展途上国側からの三大要望は、水(井戸)、病院、学校であります。
 電力事情も様々な課題を抱えています。慢性的な電力不足を解消するために、日本の水力発電技術に期待が寄せられています。
 火力発電はコストの面で難しいので、比較的コストのかからない水力や地熱発電の選択肢しかないのが現状です。
 水の供給も大きな課題です。アフリカは、一般に安全な水約6割程度、残りが危険な水であるとされています。
 新しいジャイカ復興支援、緒方理事長就任により、現場主義、約200名の国内職員を海外へ赴任、人間の安全保障と言う考え方である。「人の安全保障」
世界の中の中国
 昨年10月にセネガルでは、急に台湾から中国に変わりました。現在アフリカに中国大使館45設置されている。(日本24箇所)また、中国は、大臣50名、副首相6名、外務次官6いて戦略的な外交を推し進めている。
 英国の野上大使も言及されていましたが、日本の外交は、中国との戦いであることをまざまざと見せ付けられました。
 限られた日程での視察でしたが、日本のODAがどのように使われているのか。現地でつぶさに確認することができました。また、直接、関係者からも話を伺うことができました。今回視察したところは、ほんの一部で比較的うまくいっているケースでしたが、その他にもたくさんあります。
 政府与党は、来年度のODA予算を、マイナス3%と決定しました。国民の貴重な税金から拠出しているODAは、日本の戦略的な外交上も重要でありますので、参議院としても注視して参ります。
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